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最初に決めるのは店名や内装ではなく、「誰に、何を、いくらで提供するか」と資金の上限です。その後、物件契約の前に用途・設備・許認可の可否を確認し、内装と並行してPOS・決済・会計・採用を決めると手戻りを減らせます。各手続きの期限や対象者は事業形態(個人・法人、従業員数、建物の規模)で変わるため、本記事では公式情報で確認できる範囲を区別して示します。
開業までの全体像
| 時期の目安 | 主な作業 | この時期のゴール |
|---|---|---|
| 12〜9か月前 | コンセプト、メニュー試作、商圏・競合調査 | 客層・利用シーン・客単価・席数を言葉と数字にする |
| 9〜6か月前 | 事業計画、資金計画、創業融資の相談、物件候補の比較 | 借入後も返済できる月次収支と総予算を固める |
| 6〜4か月前 | 物件の設備・用途調査、行政への事前相談、賃貸条件の交渉 | 許可の可否と追加工事費を確認してから契約する |
| 4〜2か月前 | 内装・厨房設計、食品衛生責任者の確保、消防協議、仕入先・保険の選定 | 図面と見積もりを確定し、申請と工事の工程を合わせる |
| 2か月〜2週間前 | 営業許可申請、消防・警察への届出、採用・研修、POS・決済・会計の設定 | 検査日、納品日、研修日をオープン日から逆算する |
| 開店直前〜後 | 施設検査、プレオープン、衛生・売上・現金の日次管理 | 売上だけでなく原価・人件費・現預金残高を週次で見直す |
物件の状態、融資審査、内装工事、行政の検査予約によって必要期間は変わります。工程ごとのタスクと完了基準は飲食店開業チェックリストで管理してください。
コンセプトと事業計画を数字にする
コンセプトは「おしゃれなカフェ」のようなイメージだけでは事業計画になりません。主力商品の価格、目標客単価、席数、席稼働率、回転数、営業日数・時間の6つを数字で決めます。
客単価は実際の注文組み合わせで計算します。例えばランチ客60人のうち40人が1,000円の主力商品、20人が1,300円のセットを注文する想定なら、(1,000円×40人+1,300円×20人)÷60人=客単価1,100円です。ここにドリンクの注文率や値引きを反映すると、より現実的な数字になります。
月商の目安は、席数×回転数×稼働率×客単価×営業日数で積み上げます。20席、2.5回転、稼働率70%、客単価1,100円、月26日営業の場合、20席×2.5回転×稼働率70%=1日35人、35人×1,100円×26日=月商の目安約100万1,000円です。この金額を標準ケースとし、客数が計画の8割にとどまる慎重ケース、6割の悲観ケースも作り、悲観ケースでも現預金が尽きず返済と生活費を支払えるかを確認してください。日本政策金融公庫の「創業の手引+(飲食版)」にも、創業計画の作成と準備の確認項目がまとめられています。
開業費用と運転資金を分けて積み上げる
飲食店の開業費用は、広さ、立地、居抜き・スケルトン、厨房設備、工事範囲で大きく変わるため、一律の「平均額」を予算にせず、物件取得(保証金・敷金、礼金、仲介手数料、造作譲渡料)、設計・工事(内装、給排水、電気、ガス、空調、換気、消防設備、看板)、設備・備品(厨房機器、食器、家具、POS、決済端末、通信工事)、開業前費用(許認可手数料、保険、採用、研修、販促、初回仕入れ)、運転資金(売上が計画未達でも家賃・人件費・仕入れ・返済を支払う現預金)を分けて見積もります。税込・税抜の混在、見積もり漏れ、予備費の不足にも注意してください。
資金調達は自己資金・融資・補助金を混同しない
自己資金は返済不要ですが、生活防衛資金まで投入しないよう分けておきます。補助金・助成金は対象経費の一部が交付される可能性がありますが、常時募集ではなく、審査・要件・実績報告があり、交付決定前の契約が対象外になる制度もあるため、公募要領を必ず確認してください。
創業融資では、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」があります。公式情報によると、対象は新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方で、使途は新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金が10年以内(うち据置期間5年以内)です。利率は基準利率が原則で、女性・35歳未満・55歳以上などの条件に該当する場合は特別利率が適用される場合があります。審査の結果、希望に沿えないこともあるため、物件契約の前に支店や創業支援窓口へ相談してください。
物件契約前に「許可が取れるか」を確認する
良い立地でも、給排水、排気ダクト、電気・ガス容量、グリストラップ、消防設備、用途、管理規約の条件を満たせなければ営業できません。居抜き物件でも、前店舗の許可や設備がそのまま使えるとは限りません。賃貸借契約で希望業態・営業時間・看板・テラス・排気工事が認められるか、手洗い・シンク・給湯・冷蔵設備が管轄保健所の施設基準を満たせるか、コンロ・フライヤー・オーブンなどの火気設備と換気・排煙・消火設備が適合するか、追加工事の費用負担と退去時の原状回復範囲が契約書に明記されているかを、契約前に確認します。詳しい確認項目は物件契約チェックリストと居抜き内見チェックリストにまとめています。
飲食店開業で基本となる資格・許可・届出
必要な手続きは、提供物、営業時間、建物、収容人員、従業員の有無で変わります。次の表で対象になりそうな項目を拾い、管轄窓口で詳細を確認してください。
| 手続き | 主な対象・ポイント | 確認先 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 設備を設けて食品を調理し客に飲食させる営業。事前相談→書類提出→検査→許可の順で進む | 管轄保健所 |
| 食品衛生責任者の設置 | 各店に1人必要。調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格者がいない場合は講習を受講 | 管轄保健所・自治体が認める講習実施機関 |
| 消防署への届出 | 使用開始、内装工事、火気設備などの届出。条例や建物の規模(延べ面積など)により必要な手続き・例外が異なる | 管轄消防署 |
| 防火管理者の選任 | 建物全体の収容人員などの条件に該当する場合に必要。管理的または監督的な地位にある者から選任する必要がある | 管轄消防署 |
| 深夜酒類提供飲食店営業開始届 | 深夜に酒類を主として提供する業態など、立地・業態の条件で対象になる場合がある | 管轄警察署 |
| 製造業の追加許可 | 菓子・そうざいなどを卸売・通販用に製造する場合など。品目・工程・保管流通条件によって必要な許可の種類が異なり、一律に決まるものではない | 管轄保健所 |
| 税務署への開業関連届出 | 個人事業の開業・廃業等届出書は開業した年分の所得税確定申告期限までが提出期限。青色申告承認申請書は原則3月15日までだが、1月16日以降に開業した場合は開業の日から2か月以内と別の期限になる | 管轄税務署 |
| 雇用保険・社会保険の届出 | 従業員を雇用する場合、雇用保険資格取得届は雇用した月の翌月10日まで、保険の適用事業所設置届は事業所が成立した日の翌日から10日以内が目安。健康保険・厚生年金は法人(事業主のみの場合を含む)および常時5人以上の従業員を雇用する個人事業のうち法定業種が対象で、個人飲食店が5人以上なら一律に強制されるわけではない | 税務署・年金事務所・労基署・ハローワーク |
HACCPに沿った衛生管理を仕組みにする
食品営業者は、原則としてHACCPに沿った衛生管理に取り組み、衛生管理計画の作成、実施状況の記録・保存、定期的な見直しを行います。厚生労働省は小規模な一般飲食店向けの手引書を公開しており、新規開業時はこの手引書を使って衛生管理計画を作成すると、保健所への事前相談もスムーズになります。営業許可・届出の手続き自体は、厚生労働省の食品衛生申請等システムからオンラインで行うこともできます。
内装工事と申請は同じ図面で管理する
保健所、消防署、警察署へ提出する図面と実際の工事内容がずれると、修正や再検査の原因になります。寸法入り平面図、設備表、仕上表を最新版に統一し、変更時は行政窓口と設計・施工業者の両方に共有してください。施設検査は省略できないため、オープン前日に合格を予定する日程は避け、手直し日を確保しましょう。
POS・キャッシュレス決済・会計は一緒に設計する
レジだけを先に契約すると、決済端末と連携できず二重入力になったり、会計ソフトに売上データを手入力したりすることがあります。内装設計の段階で、注文方法、会計位置、ハンディ台数、キッチンプリンター、電源、通信、決済ブランド、売上データ連携をまとめて比較してください。キャッシュレス決済の比較はキャッシュレス決済の比較記事、会計ソフトの選び方は別記事で詳しく解説しています。
開店後は「売上」より先に現金残高を見る
開業直後は仕入れや人件費の支払いが先行し、キャッシュレス売上の入金は後になります。日次で売上、現金実査、客数、客単価、廃棄を記録し、週次で原価率、人件費、向こう3か月の現預金残高を見直してください。衛生管理の記録と、許可証・食品衛生責任者の掲示もオペレーションに組み込みます。
次にやること
今の段階を「計画・資金・物件・工事・開店直前」のどこかに置き、出店予定地の保健所と消防署の連絡先を控えてください。上の手続き表から自店に必要な項目を洗い出し、飲食店開業チェックリストで依存関係と完了基準を管理しながら、創業融資の記事で資金調達の進め方を具体化してください。
出典・確認日
2026年10月14日時点で確認できた公式情報に基づいています。消防関連の届出・防火管理者の要否は条例や建物の規模によって異なるため、一律の手続きとして断定せず、管轄消防署への確認を前提としています。製造業の追加許可は品目・工程・保管流通条件によって必要な許可が異なるため、具体的な許可名は保健所への相談を前提としています。雇用保険・社会保険の加入要件・期限は事業形態により異なるため、目安として示し所轄窓口での最終確認を前提としています。