執筆・編集:開業の献立編集部 公開日: 最終更新: 編集・広告ポリシー

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居酒屋開業で必要な許可と設備|深夜営業・消防も確認に関する準備のイメージ

居酒屋の開業準備は、一般的な飲食店営業許可だけでは終わりません。炭火・焼き物・揚げ物の厨房設備は消防法令上の個別基準があり、深夜0時以降の酒類提供や接待の有無によって必要な届出・許可がまったく変わります。物件契約前に営業スタイルと厨房設備の仕様を固め、消防・警察・保健所の確認事項を同じタイミングで進めることが、開業後のやり直しを防ぐポイントです。

居酒屋は営業形態の決め方で必要な手続きが分岐する

同じ「居酒屋」でも、深夜0時以降も酒類中心で営業するか、接待(お酌・談笑などの歓楽的な接客)を行うかで、関係する法令が変わります。深夜0時以降も主として酒類を提供する業態は警察署への深夜酒類提供飲食店営業開始届の対象になり得ますが、接待を伴う営業は届出ではなく風俗営業の許可区分に関わる手続きが必要です。警視庁の風俗営業許可申請ページでは、申請者本人や役員の欠格事由(破産手続中、一定の刑罰を受けてからの経過年数、暴力的不法行為のおそれなど)や、営業所の構造・設備が技術上の基準に適合しているか、営業所が条例で定める地域内にないかなど、許可の前提条件が示されています。接待の有無を「とりあえず様子を見て決める」のではなく、開業前に接客方針を固めて、必要であれば所轄警察署の生活安全課に営業形態を具体的に説明して確認してください。風俗営業法は令和7年5月に悪質なホストクラブ対策などを含む改正が行われ、令和7年11月28日までに全ての規定が施行されています(警察庁「悪質ホストクラブ対策について」)。古い情報をもとに営業形態を判断せず、現行の条文・運用を所轄警察署で確認することが前提になります。

焼き物・揚げ物の厨房設備は排気ダクトと油温管理に基準がある

炭火焼き・鉄板・フライヤーを使う居酒屋では、調理用の厨房設備そのものに火災予防上の基準がかかります。東京都の火災予防条例では、揚げ物調理をする厨房設備について調理油の温度が過度に上昇した場合に自動的に燃焼・熱源を停止する装置の設置、排気ダクト等は耐食性のある鋼板等で作ること、可燃性の部分から一定の距離を保つこと、油脂を含む蒸気が出るおそれのある設備では排気取入口にグリス除去装置や自動消火装置(火炎伝送防止装置)を設けることなどが定められています(東京都火災予防条例第3条の2)。ただし、排気ダクトを使わず天蓋から屋外へ直接排気する構造や、厨房設備の入力・使用状況から火災予防上支障がないと判断される場合には、一部の基準が適用除外になる定めもあります。つまり「焼き物を出す店は一律で高価なダクト設備が必要」というわけではなく、調理方式・入力(最大消費熱量)・排気経路によって必要な設備が変わるため、厨房設計の段階で施工会社と一緒に管轄消防署に相談するのが確実です。

新たに厨房設備や火を使う設備を設置・変更する際は、工事着手前・使用開始前の届出も必要です。東京消防庁の電子申請一覧には「火を使用する設備等の設置(変更)届出書」「工事整備対象設備等着工届出書」「防火対象物使用開始届出書」などが用意されており(東京消防庁「建物・テナントの工事」)、全国的にも「防火対象物使用開始届出書」の標準様式が総務省消防庁から示されています(総務省消防庁「火災予防・危険物規制事務に係る届出等様式について」)。居抜き物件で既存の厨房設備をそのまま使う場合でも、設備の入力や用途を変更するなら再度の届出が必要になることがあるため、内装工事の前に管轄消防署へ図面を持参して確認してください。

防火管理者と統括防火管理の要否は建物全体で判断する

テナントとして入居する居酒屋単体の床面積だけで防火管理者の要否を判断すると見誤ることがあります。東京消防庁の資料では、飲食店・店舗等の特定用途の防火対象物は延面積300平方メートル以上(非特定用途は500平方メートル以上)で甲種防火対象物として防火管理の対象になる例が示されており、建物全体に複数のテナントが入る場合は、各管理権原者が協議して統括防火・防災管理者を選任する仕組みがあります(東京消防庁「全体についての消防計画届出要領」)。自店舗が小さくても、入居するビル全体の延面積が基準を超えていれば統括防火管理の協議に参加する立場になる可能性があるため、物件契約前にオーナー・管理会社に建物全体の防火管理体制を確認しておくと安心です。防火管理者に選任される人は「防火・防災管理上必要な業務を遂行することができる管理的又は監督的な地位にある者」であることが前提です(東京消防庁「防火・防災管理者の資格」)。

HACCPに沿った衛生管理計画を業種別手引書で作る

令和3年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになっています(厚生労働省「HACCP(ハサップ)」)。小規模な営業者(居酒屋の多くはここに該当します)は、大規模事業者向けの本格的なHACCPシステムではなく、食品等事業者団体が業種別に作成した手引書に沿った簡易な衛生管理計画・記録で対応できる仕組みが用意されています。生の魚介類を扱う刺身・自家製の漬け込みタレ、串焼きの常温保管時間など、居酒屋特有の工程ごとにリスクを洗い出し、清掃・温度管理・仕入れ記録の手順を手引書に沿って文書化し、食品衛生責任者が実施状況を定期的に確認・記録する運用を、開業前に一度組み立てておくと営業許可の相談や保健所の立入りでもスムーズです。

開業届・社会保険の手続きも同じスケジュールで動かす

個人事業の開業・廃業等届出書の提出期限は開業した年分の所得税の確定申告期限、青色申告承認申請書は原則3月15日まで(開業の日が1月16日以降の場合は開業の日から2か月以内)です(国税庁「開業する場合」)。アルバイト・社員を雇う場合の厚生年金・健康保険の強制適用は、法人(事業主のみも含む)は従業員数にかかわらず強制適用、個人事業は農林漁業・サービス業等を除き常時5人以上で強制適用となる区分があり、居酒屋のような個人事業のサービス業は従業員が5人を超えても一律に強制適用になるわけではありません(日本年金機構「適用事業所と被保険者」)。採用計画と法人化の判断を分けて考える材料として確認してください。

開業前チェックの優先順位をつける

物件契約前に次の順で確認すると、手戻りが少なくなります。

確認段階確認する内容関連する手続き
営業形態の決定深夜営業の有無、接待の有無深夜酒類提供飲食店営業開始届、または風俗営業許可
厨房設備の設計炭火・フライヤー等の入力、排気ダクトの経路火を使用する設備等の設置届、防火対象物使用開始届
建物全体の状況延面積、他テナントの有無防火管理者の選任、統括防火管理の協議
衛生管理の準備食品衛生責任者の確保、HACCP手引書の選定飲食店営業許可申請、衛生管理計画の作成

各項目の具体的な進め方は、飲食店開業の完全ガイド、消防署への届出ガイド、開業チェックリストでも手順を確認できます。物件契約前にこの表の4項目を潰しておけば、契約後の内装工事中に許可・届出でつまずくリスクを大きく減らせます。

出典・確認日

2026年10月14日時点で、以下の公式情報を確認しました。厨房設備の技術基準は東京都の条例を例として紹介しており、他地域では基準や様式が異なる場合があるため、出店予定地の消防署・警察署・保健所で個別に確認してください。